エンジェル投資家 高野秀敏の3つの投資基準とは?
今回は3分間のピッチでエンジェル投資家とVCが投資を勝ち取る音声ライブイベント『エンジェルナイト』の開催に向けて、エンジェル投資家として出演頂く、株式会社キープレイヤーズ 代表取締役高野秀敏さんにお話を伺いました。
高野さんは、ベンチャー・スタートアップ専門の転職・求人エージェントKeyPlayersを運営される傍ら55社以上のエンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで行っています。
今回は起業家としての高野さん、投資家としての高野さんの両方の側面での人柄をインタビューを通じて紹介します。
松山:改めてとなりますが、これまでの経歴を簡単に教えてください。
東北大学卒業後、1999年に株式会社インテリジェンス入社、人材紹介事業の立ち上げに携わり、キャリアカウンセラー、マネジャー、人事部を経た後、2005年に株式会社キープレイヤーズを設立、ベンチャー・スタートアップ特化の人材エージェントとして活動しています。
国内、シリコンバレー、バングラデシュで、55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を実行しています。
松山:どんな学生時代を過ごしましたか?当時からビジネスに対する関心はあったのでしょうか?
学生時代から漠然と「人の役に立つことをしたい」と思っていました。
実家が地元でも大きな農家だったのですが、祖父も保護司をしたり、父も農協の代表をしていたり、社会奉仕をしていたため、自分も「人の役に立つことをしたい」と素直に思っていました。
一方で農業総産出額も減少傾向にあり、農業以外のビジネスで「人の役に立つことをしたい」と考えていました。
学生時代もインターネット広告代理店、家庭教師派遣に挑戦してみましたが、飛躍の予感を感じることができず、ビジネスパーソンとしての力を身につけるべく、リクルートのインターンに参加しました。
松山:東北から東京へインターンに通うなんてすごい行動力ですね・・リクルートのインターンからインテリジェンス入社まではどのような経緯だったのですか?
給料だけでなく交通費も頂けて魅力的なインターンでした(笑)。
リクルートでは現リンクアンドモチベーション代表取締役会長小笹さんをはじめ先輩方や同じくインターンの仲間からたくさんの刺激を受け、今の自分のままでは起業しても成功できないと感じ、一度就職して修行しようと決めました。
当時周囲の人に成長企業を尋ねてみると、インテリジェンスがこれから急成長するという声が多く、優秀な学生が多く集まっている場所となっていました。
松山:当時から成長企業を意識されてたのですね。インテリジェンスを辞め、起業に至った経緯は何だったのでしょうか?
インテリジェンスは人材ビジネスであり、ビジネスとしては儲かる大企業の支援が中心となります。スタートアップはビジネスとしては旨味が少なく、景気が良ければ支援するが、景気が悪くなれば支援も弱くなってしまう、そんな状況でした。
私は、東北にいて就活の際に成長企業を見つけることに苦労した経験もあり、キャンディデイトファーストで自分に適した企業を見つけられるようにしたいと考えていました。キャンディデイトファーストで、キャンディデイト(求職者)に対して適した企業を知るお手伝いができれば、クライアントにとっても採用だけでなく入社後も含めて適した人材が見つかる機会に繋がり、キャンディデイト・クライアントの双方が満足する状態を築けると考えています。
インテリジェンスではキャリアカウンセラーだけではなく、人事やマネージャーなど様々な仕事をさせてもらったのですが、これまで属人的だった求職者と企業のマッチングをデータベース化して最適なマッチングを実現するシステム開発に携わる機会があり、私のそれまでの求職者と企業の最適なマッチングを見極めるポイントもそのシステムに組み込むことができました。このシステムが稼働すればWebマーケとキャリアカウンセリングに強みのあるインテリジェンスは好循環で成長していくことが期待でき、私としても一つの成果を生み出せたと感じました。
そこで、自分の課題の起点に戻り、キャンディデイトファーストでベンチャー・スタートアップに特化した転職エージェントを立ち上げました。
松山:その後、エンジェル投資家としても活躍されていますが、ベンチャー投資を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
最初の投資はメドレー瀧口さんでした。
瀧口さんとは20代経営者の会と呼ばれるGREE田中さんやネオキャリア西澤さん、ブイキューブ間下さんらが参加されるコミュニティで出会いました。当時瀧口さんは21歳で一番若く、私は20代後半だったのですが、オーラがあり目立っていました。
瀧口さんが2社目の会社をしていた際に「次は医療系の事業をやりたい」という話をされていて、医療人材事業が私の事業とも繋がる点があり、また、旧商法では取締役会の設置が義務付けられており、3人以上の取締役が必要となるため、取締役としてお声がけいただきました。
2社目がクラウドワークスだったのですが、代表の吉田さんとは社会人の若手の頃からの知り合いで、転職相談に乗ったり、ドリコム時代の採用活動のお手伝いをしていました。
クラウドワークスの前身の会社でも役員として参画しており、現在のクラウドソーシング事業を設立する際もお声がけいただいたという経緯です。
メドレーが2009年、クラウドワークスが2011年、当時はエンジェル投資家という言葉自体が一般的なものではなく、元インテリジェンスの島田さん・DeNAの川田さんなど一部の方が個人でベンチャー投資を行っていましたが、最初はエンジェル投資を始めたというつもりはなく、元々付き合いがあり、声をかけていただいて経営に参画するという状況でした。
現在はもともとビジネス上関係があった方、知人からの紹介、TwitterなどSNS経由での相談が多いです。
松山:Code Republicの場合、プロダクト・マーケット・チームのうち、特にチームを重視しており、限られた時間内に限られたリソースでいかに数多くの検証をできるか、その仮説設計力とスピードを重視していますが、投資判断ではどのような点を見られていますか?
最も重視しているのは、「巻き込み力」です。
結果を出すためには、人を巻き込み何がなんでも成功するということが必要だと思います。そのような人物は厳しい環境で生き抜いてきた経験、ストイックに向き合って結果を出してきた経験があると思います。大人になってからではその性格は変わりづらく、家庭環境や教育など子供の頃の経験を含め、人生のストーリーを見ています。
また、「マーケット選定」も重要です。
マーケットが伸びそうかどうかに加えて、マーケットの偏差値もあると考えており、圧倒的に強い競合が存在する市場で戦うことはポジティブではありません。就職で不人気な領域のようにマーケットは存在するが、圧倒的な競合がいない領域で戦うスタートアップの方が可能性を感じます。
「お金に対する嗅覚」、ビジネスに対して鼻が利くことも重要だと思います。
現在は資金が溢れ、資金を集めること容易になっています。資金調達のための資料作成能力は高まっていますが、ビジネスを続けていくうえでお金を稼がなければならない。何が儲かるかを考えて抜いて行動できる人なのかを見ています。
松山:学生起業家に対する投資はどのように捉えていますか?
学生起業家への投資も行っています。母校である東北大の起業部の支援も行っており、実際に東北大学の学生に対して投資を行っています。
しかし、以前に比べると難しくなっていると思います。上場企業に対してスタートアップの分母は何倍にも膨れ上がっており、競争環境は厳しくなっています。
学生起業の強みは、安い人件費で仲間を集めやすいことだと思います。そのため、労働力で勝てる戦い方が有利です。たとえば、以前はSEOで戦うキュレーションメディアがありましたが、現在流行しているのはB2B・SaaSが多く、ここは業界経験がありそのマーケットを理解している社会人が強く、学生にとっては不利な領域だと思います。
ただし、Code Republicの卒業企業でもあり、私も投資しているクロスビット(シフト管理SaaS「らくしふ」を提供)も本来であればB2Bで難しい領域であるはずですが、成長しており例外もあると思います。
現在もD2CのようにYouTubeやInstagramのような新しいプラットフォームのマーケハックは、学生起業家に有利な領域であると思います。特にInstagramやTikTokは身の回りの友人がユーザーであり、若者目線が強みになると感じます。
松山:最後にエンジェルナイトではどんな起業家に会いたいですか?
巻き込み力があり、結果にコミットできる起業家にお会いしたいです。
人を巻き込むためには、自己肯定と状況の変化に対する感度や人の話を聞く度量も重要です。そして、成功を掴み取るために自らの成功体験を捨て去ることも必要です。そんな起業家の皆様とお話しできることを楽しみにしています。

▼視聴ページはこちら(Clubhouse)
https://www.joinclubhouse.com/event/JM8nbqwP
