領域は決まってるがアイディアが見つからない!アイディアの見つけ方
起業予定・起業初期の起業家と話す中で、アイディアを調べていくと、対象市場が小さかったり、先行する競合がいたり、アイディアのピボットを迫られることがよくあります。
多くの起業家がこのアイディア探しに苦戦をすると思います。起業したい領域は決まってるけどアイディアが見つからない。
今回はそんな領域は決まってるけどアイディア探しに苦戦している方に向けて、アイディア探しの一例を紹介します。企業の新規事業にも使えると思います。あくまで見つけ方の一つなのでご参考までに!
どんなアイディアを見つけるか?
スタートアップにとって良いアイディアとは『巨大な市場で十分に課題を解決しているプロダクト(A product that solves a problem “well enough” for a “big enough” market.)』を考えることではないかと思います。
これは500 StartupsのChandini Ammeineni※1のPMFの定義ですが、短期間での急成長が求められるスタートアップにとって、多くの人々が抱える課題を既存手段よりも十分に解決することが命題であると考えます。
以下のような数式で表現できます。
対象顧客数 × 年間消費額 × 購入率 = 自社売上
A.対象顧客数
対象顧客数は、自分のビジネスのターゲット人口です。ビジネスは「誰かの課題を解決することにより対価を得ること」なので、対象顧客数=課題を抱えている人数となり、課題を抱えている人数が多いほど自社の売上機会が増えます。
B.年間消費額
年間消費額は、対象顧客が課題解決のために支払う金額です。抱える課題が深刻であればあるほど単価は高くなります。
C.購入率
購入率は、競合(直接競合だけでなく代替手段すべて)と比べて自社が選ばれる率です。顧客が求めているけど、競合・既存手段が提供しておらず、自社が提供している価値があれば、購入率は高くなります。(競合数が少なければ尚良し)
つまり、課題を抱える人数が多く深刻な課題を見つけ、競合・既存手段よりも優れた価値がスタートアップにとって良いアイディアと考えます。(簡単に言うなよ、それが難しいんだと言う話だと思いますが・・)
そして、この課題と価値のアイディアをビジネスアイディアへ昇華するために以下の6つの要素を整理する必要があります。
①誰の?
自分のビジネスのターゲットです。性別・年齢・職業だけでなく価値観・ライフスタイルのように誰もが想像ができるターゲット像が求められます。
②どんな課題を?
ターゲットが抱える不満・不便です。不満・不便は深刻度が高ければ高いほど解決した際に対価を支払われる可能性が高くなります。
③どう解決するのか?
ターゲットが抱える不満・不便の解決策です。
④競合でなく自社が選ばれる理由は?
顧客が競合(直接競合だけでなく代替手段すべて)ではなく自社のプロダクトを選ぶ理由です。③の解決策のうち競合が提供しておらず自社が提供している価値です。
⑤どうマネタイズするか?
「誰に何を提供していくら対価を支払ってもらうか?」というビジネスモデル、「そのビジネスが持続的に利益を生み出し続けられるか」というユニットエコノミクスで構成されます。
⑥市場規模は?
そのビジネスがスケールできるかは「市場規模」「成長率」によって変わります。
市場規模が大きいことに越したことはありませんが、大きな市場は圧倒的なシェアを有する大企業が存在する可能性があります。一方で今後成長する市場は、競合が少なく一定のシェアを獲得できれば、市場の成長と共に売上増加を期待できます。
アイディア探しの過程でもこの6要素を活用していきます。それでは、早速アイディア探しに進んでいきます。
アイディアの見つけ方
アイディアを探すにあたって、大きく4つのステップを行います。
- 市場を分析する
- 消費者行動プロセスを整理する
- 各プロセスの課題を調査する
- その課題を抱える人数を調査する
- その課題の深刻度を調査する
- 課題を評価・選定する
- 競合を分析する
- 対象市場の競合企業を調査する
- 競合企業のビジネスアイディアの構成要素を調査する
- ベンチマーク企業を分析する
- 対象市場の海外の急成長企業を調査する
- 海外の急成長企業のビジネスアイディアの構成要素を調査する
- アイディアを策定する
- ビジネスアイディアを洗い出す
- ビジネスアイディアの構成要素を整理する
- 4-3ビジネスアイディアを検証する
市場分析では課題を抱える人数が多く深刻な課題の発見を目指し、競合分析ではリプレイスする対象となる競合を探し、ベンチマーク企業分析ではリプレイスのための競合は提供していないが自社が提供するべき価値の発見を目指します。
そして、アイディア策定ではビジネスアイディアの構成要素を整理、検証すべき仮説を特定します。
1 市場を分析する
市場分析のゴールは題を抱える人数が多く深刻な課題を見つけることです。
1-1 消費者行動プロセスを整理する
まずは自分が起業を検討している領域における顧客の行動を可視化していきます。たとえば、ヘルスケア領域と仮定した場合、顧客は以下のようなプロセスで行動しています。
1-2 各プロセスの課題を調査する
次に各プロセスで顧客が抱えている課題を調査していきます。たとえば、以下のような課題が出てくると思います。
1-3 その課題を抱える人数を調査する
次に各課題を抱えている人数を調査していきます。現時点の人数に加え、今後の対象人数の増減も考慮します。
たとえば、新型コロナウィルスの影響から予防に対する意識が定着して終息後もマスクを求める人やアルコール消毒する人は増加するかもしれません。
1-4 その課題の深刻度を調査する
次に各課題の深刻度を調査します。このあたりは年間消費額(頻度×単価)や相対的な評価であたりをつけていくイメージです。
1-5 課題を評価・選定する
各プロセスの課題を人数と深刻度の四象限にマッピングします。そして、課題を抱える人数が多く、深刻な課題を選定します。
2 競合を分析する
競合分析では、市場分析で選定した課題を解決している既存手段を調べ、リプレイス対象企業を見つけます。
2-1 対象市場の競合企業を調査する
上場・非上場含め市場分析で選定した課題を解決している企業を探し、リストアップします。ほとんどの企業はインターネット検索で発見することができます。たとえば、PHRなら「PHR」のようなワードや「体重 記録 アプリ」のような顧客視点のワードで検索してみます。
ここで注意したいことは、課題解決をしている企業はすべて競合であるということです。たとえば、PHRならアプリサービスだけでなく健康記録手帳のような商品も競合となります。
2-2 競合企業のビジネスアイディアの構成要素を調査する
次にリストアップした企業のビジネスアイディアの6つの要素を整理していきます。ここではリプレイス対象企業を設定するため、市場シェア上位の企業を知るため、売上・ユーザー数・導入社数のようなKPIも併せて調査します。
3 ベンチマーク企業を分析する
競合分析によりリプレイス対象となる企業を見つけた後は、リプレイスのヒントを探すべく、先行して事業展開している海外企業を調査、リプレイスのヒントを探します。
3-1 対象市場の海外の急成長企業を調査する
上場・非上場含め市場分析で選定した課題を解決している海外企業を探し、リストアップします。成長しているかを知るために売上・ユーザー数・導入社数のようなKPI、時価総額・資金調達額のようなKPIを参考にします。シードの資金調達の情報だけでは成長しているか判断できないため、シリーズAできればシリーズB・Cまで進んでいると理想的です。
ユニコーンリストや Crunchbase、スタートアップ系のニュースメディアをチェックしてみましょう。
3-2 海外の急成長企業のビジネスアイディアの構成要素を調査する
競合分析同様にベンチマーク企業のビジネスアイディアの6つの要素を整理していきます。特に「なぜその企業が成長したのか?」「競合は提供していないがベンチマーク企業が提供した価値は何か?」に注目して整理することが重要です。
4 アイディアを策定する
最後はこれまでの調査を踏まえ、自身のビジネスアイディアを整理します。
4-1 ビジネスアイディアを洗い出す
選定した課題に対して解決策のアイディアをリストアップします。
4-2 ビジネスアイディアの構成要素を整理する
リストアップしたアイディアのビジネスアイディアの6つの要素を整理していきます。競合・ベンチマーク企業の各要素を参考にしつつ、「競合は提供していないがベンチマーク企業が提供する価値」の構築を目指します。
4-3 ビジネスアイディアを検証する
策定したビジネスアイディアの各要素において検証しなければならない項目を特定、インタビューやMVPにより検証を繰り返していきます。検証方法の詳細については以下をご参考ください。
▼ニーズ検証
▼ソリューション検証
今回紹介した方法はあくまで一つの方法であり、良し悪しが存在すると思います。ここまで手をかけなくても海外の急成長企業を調査、日本で展開できないか検討することでスピーディーにアイディアを見つけることも可能です。
一方でアイディアのほとんどは検証の過程で問題が見つかり、振り出しに戻ってしまうことが多いです。今回のプロセスでは、市場の全体像から入り、選択肢(複数のアイディアの種)を持つことができるため、結果的に成功するアイディアの発見に最短のアプローチになるのではないかと思っています。
※1 [500Distro] 500 Startups Growth Process with Chandini Ammineni